日本の家づくりでは、「尺」という寸法を使います。
1尺は約30.3cm。
今では数字として覚えていますが、そもそも「尺」という言葉は、人の身体と深い関わりがあります。
ある時、生体の勉強をしている甥っ子と建築で使う尺という単位の話をしていた時のことです。
尺?それなら尺骨って呼ばれている骨があるよ
と、
しかも
尺骨の長さと、足の大きさは、だいたい似ているのだと。
尺骨というのは、肘から手首までにある骨のこと。
もちろん、人によって身体の大きさは違うので、ぴったり同じになるわけではありません。
けれど、人の身体には、腕や手、足など、長さを測る目安になりそうな部分がいくつもあります。
昔の人にとって、身近な身体そのものが、ものさしだったのでしょう。
イギリスでは「足」がものさしになった
一方、イギリスを中心に発展した長さの単位に「フィート」があります。
英語の foot(足) が語源です。
現在の1フィートは30.48cm。
日本の1尺は約30.3cmです。
ほとんど同じくらいの長さです。
もちろん、1尺と1フィートが同じ単位だったわけではありません。
日本とイギリスでは、文化も歴史も違います。
それでも、
日本では「尺」。
イギリスでは「フィート」。
どちらも、人間の身体を基準にした長さだった。
ここが、なんだか面白いのです。
離れた場所で、同じことを考えていた
昔の日本とイギリスが、今のように簡単につながっていたわけではありません。
それぞれの土地で、それぞれの暮らしがありました。
それなのに、長さを測ろうとすると、
「自分の身体を基準にしてみよう」
という発想が生まれている。
腕や手、足。
誰もが持っているものです。
考えてみれば、とても自然なことなのかもしれません。
でも、遠く離れた場所で暮らしていた人たちが、似たようなことを考えていたと思うと、少し不思議な気持ちになります。
家も、人の身体から考えられてきた
家づくりでも、身体は大切な基準です。
人が歩く。
手を伸ばす。
腰掛ける。
寝る。
料理をする。
そのために必要な大きさを考えていく。
昔の家づくりで「尺」という寸法が使われてきたのも、人の身体と暮らしが近いところにあったからなのかもしれません。
今はミリ単位で寸法を決め、CADで正確な図面を描きます。
それでも、最後にその家を使うのは人間です。
そう考えると、昔の「尺」という寸法が、今の家づくりに残っていることも少し納得できます。
30cmほどの長さから
1尺と1フィート。
約30cmという、ほんの小さな寸法の話です。
でも、その二つを並べてみると、
日本で暮らしていた人も、
イギリスで暮らしていた人も、
自分たちの身体を見ながら、長さを考えていた。
そんな共通点が見えてきます。
国が違えば、言葉も文化も違う。
けれど、人間の身体は大きくは変わりません。
お腹が空けば食べる。
寒ければ暖かくしたい。
雨が降れば屋根が欲しい。
そして、暮らしやすい家をつくる。
もしかしたら、人間は思っているほど違わないのかもしれません。
違いを知ることも大切だけれど、
「ここは同じなんだ」と気づくことも大切なのだと思います。
1尺と1フィート。
この二つの単位を眺めていたら、
そんなことを考えてしまいました。
世界中の人が、違うようで同じ世界に暮らしている
今日は、そんな1尺と1フィートのお話でした。