イルマーレ
イルマーレ 原題 「時越愛」
2000年の韓国映画
監督 イ・ヒョンス
主演 イ・ジョンジェ チョン・ジヒョン
これ18年も前だったんだ・・・(この記事は2018年に書いています)
Filmarks での評価 3.6 (満点5)
個人的には 4.5点。
イルマーレを好きすぎるが為に家について語ってみました
こんにちは、Mr.giraffeです。
イルマーレという映画を、ご存知ですか?
ハリウッドでも、キアヌリーブスとサンドラブロックのキャスティングでリメイクされています。
その、本家韓国のloveストーリ映画、イルマーレ。
終始、景色の場面なんかは薄暗い感じがするのですが、きっと何か意図があるのだろう?と変な期待感を膨らませてしまいます、深読みしすぎですかね?
スカッと色鮮やかというわけではない、そんな海です。
今回、映画の中に出てくるイルマーレという建物について、考察してみたいと思います。
思わず、この家借りたいなと思ってしまうようなデザインが、気づかないところに散りばめられていて、それらがよりストーリーを引き立てる役目を果たしている。
危うく主役になりそうなくらいの、脇役として・・・ とてもきれいな 映画 です。
映画の内容の説明ではなく、建物に焦点を当てた内容になりますので、ご了承ください。
それでは、
時を歪ませるポスト
この映画の核である、このポスト。
普通は、新聞紙や、いらない不動産のチラシが届いたりするポスト。
全然面白くも、ロマンチックにもなりそうもないですよね。
この、やたらとお洒落なポストに、ウンジュが手紙を入れておいたところから物語が進んで行きます。
某有名メーカーのカタログでも探してみましたが、案の定載っていません。
見かけた際には、迷わず購入をお勧めします。
幻想的な家
海の中に ぽつん と建つ家。地盤はどうなんだろうか?改良工事はきっと必要だよな。
造り的には鉄骨造だと思うので、コンクリート杭だとして、それだけでも工事費、数百万ですね 。
表札 イルマーレ
表札の替わりなのか? 角材を斜めに切ったものを2本並べて、その木口に塗装でIL MARE 。
この角材は、無造作にボンと置かれただけだけど、なんともかっこいい表札。嫌表木。
砂利道 に、教会の彫刻を彷彿させるデザインのポストをたてて、角材の表木を置く。
その表木の周りに、高さの違う灯りをランダムに配置して、すごくシンプルで無駄のない外構。
これってもう、お店ですね。ようこそ、イタリアンレストラン、イルマーレへ。
駐車場は海辺に留めてください・・・
家 までの 長い アプローチ
そこから家へと続く長いアプローチ 。
鉄骨 かな?の骨組みに、コンクリートのような石板を敷いたアプローチ 。
アプローチを支える柱の高さ、推定4~5m。結構な高さですね。
満潮の時には、海の中に浮かぶように設計されている、家と陸地とを繋ぐ重要な役割。
手摺も何もない、一見危険なアプローチ 。
時に危険を冒さなければ、いい出会いには巡り合えないんだよっと言わんばかりの、そんなデザインの橋 型アプローチです。
毎日、身が引き締まる思いです。
実は、お洒落なデザインと危険とは、紙一重なんですよね。
バスケットのエースプレイヤーを想像してみてください、得点王と自己中は紙一重みたいな、
このぎりぎりのラインのせめぎあいが、プロの仕事ではよく起こっています。
それにしても、このツリーの電源は何処から引っ張っているのだろうか?
家から地中を埋設してここまで線を持ってくるにしても、簡単ではないですね。
なんせ、時々海底になるのですから。工事費正直わかりません。
海底ケーブル並みの耐久性が必要ですかね?
広がる自然光
建築とは・・・
窓から差し込む 海からの光 が家の奥まで 届いている。
窓際にある縦格子をすり抜けてきた光が、柔らかい光へと姿を変えて、デザインの一部としての影を造る。
【建築とは、人を雨風から守るために、まず壁で覆うこと。
そして、暮らしに必要な、風と光を取り入れるための穴を空けること。
自然との境を何処にどうやって引いていくのか?
箱を造るというよりも、境界壁を造るイメージ。】
これが私の考える建築です。
外から見ると ぽつん と建つ人工物の一つにすぎないけれど、一歩中に入ると、そこには信じられないくらいの優しい自然が広がる。
理想的な空間ですね。
日本の狭い土地でこれを実現するのは、至難の技ですが、基本的な考えはこれに基づいて家を造っています。
すみません、話が少し私的になりました。
それにしても 気持ちよさそうな 空間だな。
ちなみに、玄関土間には犬の足跡があるみたいですよ。
こんな物件が賃貸サイトに載っていようものなら、すぐ契約してしまうことでしょう。
ため息が出るくらい、良い空間。
棚
縦長の窓をアクセントにして、壁には造り付の棚を。
収納というよりは、飾り棚のようですが、何も物がないのになんだか絵になる棚。
普通は背景としての棚ですが、単独でも十分に行けますね。
使い勝手はおそらく良くないと思われる棚。
お洒落をするには、少しの犠牲が伴うのも、世の常ですね。
よく見るとこの棚、棚板を支えている横桟が斜めになっています。
手前から奥に、奥から手前にとVの字でつながっているようにも・・・
もしかしたらこれは、折りたたみ式で移動ができる棚かもしれませんね?
そういった面では、よく考えられた棚だったのですね。
バスルーム
バスタブとランドリーがカーテンで仕切られている、日本の住宅では、あまりお馴染ではないタイプ。
壁面が、木の合板???!というところが、建築家心をくすぐる仕上げです。
水廻りに、あえてこの素材で勝負するという、チャレンジ精神を感じさせる壁。
木目調の防水性パネルか?木質の上にクリアのウレタン塗装か?
つなぎ目のコーキングが目立たないなめ、木製のパネルの可能性が高いですが。
アグレッシブWallとでも呼びましょうか?
アプローチで危険を冒し、光で癒され、一息つこうとしたのもつかの間、アグレッシブな壁が押し寄せてくる。
挑戦を忘れるなと、うったえかけてくるような、イルマーレ。
海のように、深い意味の込められたデザインが、ひしひしと伝わってきます。
外壁
折半屋根程ではないですが、大きな山の外壁。おそらくガルバリウム。
大き目の山にすることで、外観に無骨さがプラスされ、荒々しい自然の中で生きていく、ライオンのような勇ましさを、表現しているのではないかと推察します。
海なのにライオン?
ライオンにとっては、それはもう、アウェイ中のアウェイな環境。
そこに自ら身を置くことで、きっと何か見える物も違ってくるのでしょう。
ストイックな建築ですね。
表側は 白い石貼りのような 外壁 なので、裏側とは違うデザインになっているようです。
どうやらこれは、人間の持つ、表の顔と裏の顔を表現しているのではないか?
表裏一体とはまさにこのことですね。
海辺の家のシーンは、薄曇りのような、決して明るいとは言えないシーンが多いのですが、それがこのスタイリッシュな現代風の建物と凄くあうんですよね。
どんよりとしているけど、変に暗いわけでもなく、
この場所なら、時間が歪んでもおかしくないなという気にさせてくれる。
干潮の時に現れる素敵な階段。
下りたいという衝動に駆られる。上りたいよりも下りたいという階段。
幸せの階段を上るとか、夢へ向かってステップアップとか、とりあえず今よりいい場所は上にあるんじゃないかという一般的な感覚。
だけども、もしかしたら幸せって上だけではないのでは?
時には階段を下りた場所に、目指していた場所があるのかもしれないな 。
そう思うと、選択肢も増えて、より迷うけれど、同時に楽しさも増えるような気がします。
日常の階段は、上りっぱなし、下りっぱなしということは無いはずですから・・・・
大人の階段
やっぱり手摺は無いですね。
愛する人のために設計したイルマーレとは違う家
設計者は誰なのか?
やっぱり ポスト が描かれている!ちょっと 大きすぎるくらいに!
ということは・・・
この家もまた、時間を歪ませる家なのかもしれない。
それとも、そうあって欲しいという願望なのか?
PS
ちなみに、イタリア語の IL Mare 。
意味は 海 です。
海辺の建物のまわりで繰り広げられる物語。
イルマーレ のように、物語を感じられるような家を造れたら、建築家として、そんなに幸せなことはないだろう。
一つ一つの家のまわりで、それぞれの人生が展開していく。
良いことばかりではないけれど、悪いことばかりでもない。
家を造る、様々な要素が愛おしく思える、そんな作品でした。
イルマーレ という建物無くして、映画イルマーレは語れない。
私の中の名作です。