広重ブルーのトイレ
浮世絵 厠
丁子屋様のトイレリノベーション
丁子屋様の2階にある厠を改装させて頂きました。
400年以上続くとろろのお店ですが、
当初はおそらく、お客様用トイレなどは、なかったのではないでしょうか?
浮世絵の、丸子宿にも登場する茅葺屋根のとろろ屋さん、ということもあり、
浮世絵を厠で表現すべくデザインをしました。
広重ブルーのトイレ
晴天の霹靂
壁は広重ブルーとも言われている、青色に。
下の画像、真珠の耳飾りの少女。
この頭に巻いている布のブルーが、
広重の浮世絵によく使われている、青い顔料と同じ物だとか・・・
その当時の世界のつながり方が、色によって想像できるということが、
とても不思議で、興味深いですね。
今ではネットのおかげで、世界が身近な感じがしますが、
当時の時代で、この色に出会った時の絵描きたちの反応は、
それはもう、なんだこの色は!!!!!!みたいに
天と地がひっくり返るくらいの、
そういったインパクトがあったのかもしれません。
晴天の霹靂・・・
この広重の浮世絵には、欠かせない深みのある 【広重ブルー】
この色を使って、静かな浮世絵の夜を厠で表現することに挑戦しました。
逆輸入の梅
その夜の壁の中には、
薄暗闇にうっとりゆれる梅の花を塗り壁で立体的に描き、
下には花瓶を添えました。
ゴッホも模写したと言われている浮世絵の梅。
その梅をオマージュして、この広重ブルーの壁へ。
いわば、日本から一度海を渡り、そうしてまた、ここ 丸子の丁子屋のこの厠にたどり着いた、
逆輸入の梅ということになります。
この梅を眺めて、見る人それぞれに「 梅物語 」・・・十人十色の梅が咲く壁。
想像してみてくださいね。
当時にはおそらく無かったと思われる、おむつ替えができるブースも時代に合わせて完備。
広重ブルーのトイレ 施工 sugiekensetsu
開運の道へと誘う亀 広重ブルーのトイレ
足元には悠々と歩く亀の姿が。縁起物として昔から色々なところに登場する亀。
絵の中から飛び出してきたのか、逆に絵の中に飛び込んでしまったのか・・・??
そんな不思議な感覚を味わえる、 浮世絵厠。
丁子屋12代目の生前の言葉で、非常に印象に残っている言葉があります。
「 前途は洋々たるもんだ。 」
goo辞書参照
『今後の人生が大きく開けていて、希望に満ちあふれているさま。
「前途」は将来、目標までの今後の道のり。
「途」は道のりのこと。
「洋洋」は水があふれるように一面に満ちている様子。
前途が大きく広がっていることを表す。』
この言葉の響きと12代目の話し方がそれはもう洋々としていて、
その姿が忘れられません。
ゆっくりと歩いていくこの亀の行く先には、
12代目の見ていた光景と同じもの広がっているのだろうか?
亀の背中に期待を抱かずにはいられません。
粋
個別ブースの壁には檜の板をあしらい、ほんのりとひの木のいい香りが漂う癒しの空間。
天井に付くダウンライトも写真ではわからないのですが、
フレームの内部が微妙にブルーになっているダウンライトを採用。
表面には現れてこない隠れたこだわりです。
一歩 中へ入ると
ドアの裏には 着物の帯飾りを。
江戸時代の 「粋」 を表現。
当時の江戸では、着物の裏地を綺麗な柄にして、隠れたおしゃれを楽しんでいたのだそうです。
その心を、ドアの裏側を裏地に見立てて、表現してみました。
見えない所が萌えるデザイン、そういう洋服、ありますよね?
そんなイメージです。
続いて 下の写真、奥の白い壁をご覧ください。
真ん中右隅の模様が小さく描かれているのが見えますか?
これは広重の絵に出てくる、人物が着ている服に、時々見られる家紋です。
カタカナで ヒロ と読めますよね?
広重の遊び心がひしひしと伝わってくるこのデザイン(ひし形だけに)。
これまた粋を、感じさせるこの家紋。
隠れ家紋として各ブースの何処かに刻まれています。
ぜひ探してみてくださいね。
世界で一番大げさな出口
そして、一通り厠を体感して頂いた後に 、必ず この 「 戸 」 と向き合います。
人生の節目で現れる、新たな出会いへと続く入口。
今いるトイレ空間からの出口。
入口でもあり出口でもある、そんな戸を前にして、ひと呼吸。
自分と向き合い覚悟を決めて、一歩前へ。
お腹を膨らませた後には、希望に胸をふくらませて・・・行ってらっしゃいませ!
おっと、スリッパを脱ぐのを、お忘れなく。
厠とは思えないほど、世界で一番大袈裟な出口です。
馬鹿印
???
っと一歩踏み出す前に。
馬? 鹿?
これは 広重デザインの烙印、福寿印と呼ばれるものです。
別名 馬鹿印 とも呼ばれている烙印。
福をくずしたものが 鹿の絵に、寿をくずしたものが 馬に、
馬鹿 と 福寿。
このデザインにも広重の人柄を感じますね。
外からは 馬鹿がひっくり返って鹿馬となるように、建具を切り抜きました。
入る時は、何だこれは?ですが、
出ていくときには、否が応にも目に入る、福寿印。
お客様がこの厠体験の最後に、流れで烙印を押していく形に・・・
そうです、この厠に飛び込んだ瞬間、
あなたがこの浮世絵の主人公となり風景をつくっていく。
右往左往して・・・試行錯誤して・・・
時には 紙切れ だってあるでしょう!
こうしていつのまにか絵を描き、そして完成の出口を後にする。
この浮世絵厠 広重ブルー の世界は、お客様の数だけ存在するのです。
PS.人生はとろろだ
旅先の空気を切り取っては、思い出にして、
良いことも、困難も、ごはんにかけて味わっていく。
時にはとろろのような粘り強さも必要だろう。
粘り強く、そしてさらさらっと生き抜いてやる。