ちょうどいい大きさの家が、これからの豊かさになる。
1973年、イギリスの経済学者 E.F.シューマッハ は、一冊の本を出版しました。
そのタイトルは 『Small Is Beautiful(スモール・イズ・ビューティフル)』。
直訳すると「小さいことは美しい」。
けれど、この言葉は「小さいものが良い」「大きいものが悪い」という意味ではありません。
大量生産、大量消費、そして「大きいこと」が豊かさの象徴だった時代に、シューマッハは「人間にとって本当の豊かさとは何か」を問いかけました。
50年以上前に書かれた本ですが、その問いは、今の家づくりにも重なっているように思います。
「大きな家」が豊かさだった時代
少し前まで、家は大きいほど良いと言われる時代がありました。
広いリビング。
子ども部屋は一人一部屋。
和室の客間。
大きな収納。
庭付きの家。
もちろん、それは間違いではありません。
家族が増え、子どもが成長する時期には、広い家が必要なこともあります。
しかし時代は少しずつ変わりました。
子どもの人数は減り、一人暮らしや夫婦二人で暮らす世帯が増えています。
そして私たちは、お客様からこんな言葉を聞くことがあります。
「使っていない部屋があるんです。」
「二階はほとんど上がりません。」
「掃除が大変になってきました。」
「減築できませんか?」
家は完成した瞬間がゴールではありません。
暮らしが変われば、家との付き合い方も変わっていきます。
小さい家には、小さい家の豊かさがある
私たちは、小さい家を勧めたいわけではありません。
でも、「必要以上に大きくしない」という選択には、多くのメリットがあります。
建築費を抑えられる。
冷暖房費が少なくなる。
掃除がしやすい。
修繕費やメンテナンス費も抑えられる。
家事の移動距離が短くなる。
家族との距離も自然と近くなる。
そして、子どもが独立したあとも、夫婦二人でちょうど良く暮らせる家になります。
物価が上がり、光熱費も上がり続ける今の時代。
「ちょうどいい大きさ」の家は、暮らしにゆとりを残してくれる選択肢なのかもしれません。
もちろん、小さい家にもデメリットはあります
収納が足りなくなるかもしれません。
来客が多い家庭には窮屈に感じることもあります。
趣味の部屋や書斎を諦めることになるかもしれません。
だから、小さい家が正解ではありません。
大切なのは、「何を大切にしたい暮らしか」を考えることです。
広いリビングが必要な家族もいます。
趣味の工房が必要な人もいます。
答えは一つではありません。
禅の教えに「足るを知る」という言葉があります
必要以上に持つことが豊かさではなく、自分にとって必要なものを知ることが豊かさである。
そんな考え方です。
家も同じではないでしょうか。
広いことよりも、自分たちにとって心地よい大きさを選ぶ。
それは、決して我慢ではありません。
暮らしを大切にするという選択です。
家づくりも、これからは「つくる責任」を考える時代へ
住宅は建てたら終わりではありません。
何十年も住み続け、やがて修繕を繰り返し、いつか役目を終える日が来ます。
その時まで考えて家をつくること。
長く住めること。
メンテナンスしやすいこと。
エネルギーを無駄にしないこと。
家族構成が変わっても住み続けられること。
そんな視点が、これからのサステナブルな家づくりには必要なのではないでしょうか。
家は、広さではなく「余白」で豊かになる。
大切なのは、家族にとって「ちょうどいい大きさ」を考えることです。
必要以上に大きな家を建てれば、その分だけ建築費も、光熱費も、メンテナンス費も増えていきます。
反対に、自分たちに合った大きさの家は、暮らしに「余白」を生み出してくれます。
住宅ローンに追われない、お金の余白。
掃除や管理に時間を奪われない、時間の余白。
季節の移ろいを楽しみ、家族とゆっくり過ごせる、心の余白。
その余白があるからこそ、本当に大切なことに目を向けられるのではないでしょうか。
家は、人生の主役ではありません。
家族の暮らしを支える「舞台」です。
だからこそ、私たちは広さが第一ではなく、その家でどんな毎日を過ごせるのかを大切にしたいと考えています。
Small is Beautiful。
「自分たちにとって、本当に豊かな暮らしとは何だろう。」
その問いを持ち続けること。
そして、家を建てるときも、暮らし始めてからも、その答えを家族と一緒に探し続けること。
それこそが、これからの時代の家づくりなのかもしれません。
杉江建設は、そんな「ちょうどいい豊かさ」を、お客様と一緒に考え続ける工務店でありたいと思っています。
